戯言委員会

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君と僕の演目「序文」

 夢の瞬間が終わって、君はボクに微笑んだ。
 暗い現実に変わって、君はボクを嘲笑った。
 求め合った果てに、君とボクは結ばれた。
 愛し合った果てに、君にボクは殺された。
 時の呪縛に逆らうことを二人で誓い、ただ一心に互いを見つめた。
 共に呪縛に囚われたのにボクらは離れ、ただ役割を互いにこなした。
 君の瞳に映るボクはとても醜悪で、
 ボクの瞳に映る君はとても流麗で、
 縛られた鎖を解き放つための剣は、
 演ずる役割を成し遂げる兇刃に変貌し、


―――すんなりと、ボクの胸はそれを受け入れた。

posted by 1092361 23:23comments(1)trackbacks(0)pookmark





君と僕の演目「序章」


序幕  かくて世界は広がって

 

「おい、起きんかこのスカタン」
 随分と失礼な罵倒で目が覚めた。
 むっくりと身を起こすと、そこには見慣れた宿屋の壁。そして、隣に視線を移せば見飽きたマスクと見知った顔。
「・・・・・・お早う、リゼル」
「お早くない、もう昼だ」
 言いつつ、リゼルがカーテンを開けると、窓から差し込む光がその言葉を裏付けるようにボクの顔を打つ。
「随分、よく眠れたよ」
「充分、と言え。まだ寝る気か貴様」
 大層失礼極まる言い方だけど、これは彼のデフォルトだからもう慣れている。
 ボクらはもう3ヶ月近くを共に旅していた。
 この世界は、まあ単純に言ってしまえばつい最近まで魔王に支配されていた世界だ。
 剣と魔法を操る勇者がそれを妥当して以来、この地には平和が満ちている。
 それでも、残党のように残っている魔物やら魔獣やらの類はいるもので、それを倒して回ったりしながら各地を旅するのがボクらのような冒険者という人種。
「今日は、もうどっか行くんだっけ?」
 と言っても、ボクはリゼルについていくだけ。
 何故ならボクには記憶がない。ここ3ヶ月より以前の記憶は、完膚なきまでに抜け落ちていた。
 気がついた時、隣にはリゼルがいて、
『俺と共にいろ、今はそれだけでいい・・・・・・エルト』
 ただ、ボクの名前を呼んでくれた。
「今日は朝にここを発つ予定だった。夕刻になるより前に目的地に着けるようにな。そして、今現在すでに日が傾ぎつつある。分かるか?」
「もう一泊できるのかな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 そんな、出会いには優しい言葉をかけてくれたリゼルのゲンコツが、ボクの上に無言で振り下ろされる。
「あだっ」
 正直、目から火が出るほど痛い。
 ちょっとイタズラ心で本当に目から火花を出す程度の余裕はあるけれど。
「下らんことに魔法を使ってないでさっさと支度しろ」
「はぁい」
 とりあえず従う。今のボクにはとりあえず彼についていく以外の選択肢は用意されていないから。
「外で待っている」
 リゼルが部屋の扉を閉めると同時、ボクは寝巻きに手をかけた。

 


 ちょっと自分の整理のために今のこの世界というものを考えてみる。
 半年ほど前まで、この世界は暗雲に閉ざされていたらしい。
 もうわっかりやすい「魔王、支配中」みたいな世界が日常で、魔族とかが街の基本的な住人だったとか聞いている。
 人間の店に来る主な客さえ、背中から蝙蝠の羽生やしてるような「自分、非人間ですから」な方々だったようだ。あれ、思ったより平和じゃんそれ。
 でも、ちょっとしたことで人間は簡単に殺されていく世界ではあったようで、
「恐怖を隣人にすることなど、人間の脆弱な神経が耐えられるわけないだろう」
 というリゼルの思想が一般的だったらしい。
 その恐怖の最たる対象が、魔を統べるものたる魔王だったそうで、人々は戦々恐々としながら日々を過ごしていた。
 リゼル曰く、
「まあ、魔王とは言ってもただ単純に阿呆ほど魔力が高いだけの魔族であることに変わりなかった」
 ということだが、普通の人にはやはりそれが脅威だったのだろう。
 魔を統べるもの、つまり恐怖の根源。
 それを断つために幾人もの『特別な』人間―――魔法使いや剣士と呼ばれる類の人々は彼の居城へと赴き、
「誰も帰って来なかった」
 という結果に終わったとリゼルから聞いた。
「それは勇者も例外ではなかった。人々は暗雲が晴れたことで魔王がいなくなったと信じ、魔族はいつの間にか消えていた。淘汰されたり、魔界へと還ったりしたのか、それは未だに分からんが、結果として人心は落ち着きを取り戻し、長き漆黒の時代からようやく解放されたと喜んだ。暗黒ではないことに、最後まで気づかないまま、な」
 彼は最後によく分からないことを言ったが、結末はこの世界に光溢れたものであったのだろう。
 事実、今この世界に注ぐ陽光はこんなにも温かい。
 そう、宿屋の扉を開くだけで、ボクの身体を包んでくれるのだから。

「遅い」
 まあ、対極の如き冷気が前から飛んできたけどね。
 リゼルさんはどうやらご立腹な様子でボクをジト目で睨んでいる。
 鉄製のマスクが口元を隠しているため、その目がやたらと語っていた。
 そのマスクは、昔魔物にやられた傷を隠しているといって、ボクにも見せてはくれない素顔を隠し、代わりに目つきの鋭さを際立たせている。
「ちょ、ちょっと遅くなっただけだよ?」
「ちょっとか。お前のちょっとと俺のちょっとの間には随分と深い溝があるな」
 まあ、日は暮れつつあるけど、そんな言い方をしなくてもいいと思う。
 これでも急いだのだ。寝癖を直したり、ちょっと出かける前にお風呂に入ったり。
「外で待っているといったはずだが?」
「これでもボク、女だよ? 女の人には色々あるんだよ?」
 そう、これでもボク、エルトことエルティシア・アイゼンバルトはれっきとした乙女だ。
 普段は、一応冒険者という立場上男の子として立ち振る舞うほうが便利な場合が多いからそうしているし、名前だってリゼルがそう呼んでくれたからそう名乗っているだけではあるが、当の本人であるリゼル―――リゼット・ルシェーブがボクを女扱いしたことは、ボクの短い記憶には全くない。きっと昔も無いはずだ。
「知らん。俺たちにとって鈍間なのは死を招くだけだ。それに・・・・・・」
 真っ当な抗議(のつもり)を冷ややかに返して、リゼルはボクを見る。主に胸部だった。
「俺の知っている『女の人』というのは胸に大層脂肪がつくものと相場は決まっている。その洗濯板にすらならん胸部を充分成長させてから女を名乗れ」
 そして、もんのすっごい失礼なことを表情全く変えずに言い放った。
 もう見事なまでの否定だった。
 いっそ清清し過ぎて怒り通り越しの哀しみすら誘うほどだった。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「行くぞ、エルト。何を呆けている」
 ついでに、うなだれたボクにトドメまで放ってくださった。
「・・・・・・相変わらず、優しくないね」
「捨てた。優しさのせいで死んでった奴を、腐るほど見てきたからな」
 いけしゃあしゃあと。
「母親のお腹の中に置き忘れてきたくせに」
 精一杯の罵倒も軽くスルーされる。
「日が暮れるのはもう仕方が無いとしても、なるべく早くリーンにたどり着くぞ」
 うわ、目もくれないよこの冷血漢。
「血、通ってる?」
「問題なく、血圧も全く以って健康値だ」
「いや、皮肉だし」
「解っていてスルーしている。かっかするな、血圧が上がるぞ」
 ・・・・・・だめだ。口では勝てそうにない。
 諦めてがっくり肩を落とすボクの気配を感じているにも関わらず、リゼルは言うなりさっさと歩き出してしまう。
「って、本当にスルーするなよっ。この冷血漢っ!」
 慌てて後を追う。
 リゼルの歩調は、ボクより数段速いし、歩幅も大きいから、ボクが付いていくときはどうしても駆け足気味だ。おかげで、随分と体力がついた気がする。
 裏返せば、女の子の歩調を全く意に介さない冷血漢の旅に同行してるボクの哀れが出てくるけどね。
 ようやく歩調が揃って、肩が並ぶ。
 いつものことながら、やっぱりリゼルはボクに優しくない。でも、不思議なことに全く嫌じゃない。
 どうしてだろうか。上手くいえないんだけど、これは、ボクが昔から望んでいたことのような気がするんだ。

 

 

posted by 1092361 23:31comments(0)trackbacks(0)pookmark